「シニガミハッピーエンド」

obustat / MAYU (sm21107090)

***

某所某日の昼下がり
不幸な事故でこの世を去った彼女が
願った想いは実を結んで
「死を司る神になりました!」

雑踏に溢れる街並み
多すぎる人の群れ
ああ こんな世界に
未練などは微塵もないけれど
現世にとどまっていたい
理由はただひとつだけ
「想い寄せるあの人が
 死ぬまで見守り続けるの」

触レルコトモ話スコトモデキナイケド
今ハマダコレデイイノ

恋に落ちた死神少女
鎌を振るい死者を導く
この想いが続く限り
あの人が生きている限り
幾千もの死に立ち会って
忌み嫌われ恐れられても
「そんなことはどうでもいいの!
 あなたの魂(こころ)は私のもの」

お目覚めからおやすみまでの
あの人の暮らしはもはや完全網羅
死神仕事の合間を見つけては
観察ライフ楽しんでました。

唐突に倒れる彼の体
「どうしたの?
 なぜあなたが死に近づいてるの?」
「まだその時じゃないでしょ」
「そんな辛そうな顔しないでよ」
失意に暮れた私に
いつか聞いた教えが蘇る

死神ニ魅入ラレタ者ハ
ヤガテ不幸ガ訪レ死ニ至ル

泣いた 泣いた 死神少女
誰よりも強いこの気持ちは
"愛"じゃなかったのかな?
届いてたものは呪いでした
「違う!死神になったのは
 あなたを殺したかったからじゃない!」
死ぬ前に見れなかった
あなたの笑顔が見たかったんだ

そして少女は 心を決めた
右手の鎌を握りしめ
躊躇わず喉笛を引き裂いた

苦シミニ歪ムアナタノ顔ナド
モウ二度ト見タクナイ

「あなたを想うこの気持ちが
 なくなることなんてあり得ない!」

恋に堕ちた死神少女
裂けた喉から飛沫(しぶき)混じりに
出ない声で叫んだ
呪いではない愛を叫んだ
「死を司る神のくせに
 あなたの死を受け入れないなんて
 死神失格だよね
 だから代わりに私が消えるね」

闇に消えゆく死神少女
漆黒に飲まれる最中(さなか)
寝込んだままのあの人が
笑ってくれたような気がした
「あなたが目を覚ますその時は
 私はもういないけれど
 どうか幸せでいてください
 あなたが生きている それだけで
 私はもう幸せだから」

たとえ身体が朽ち果てていても、
たとえ心を失ったとしても、
あなたのことは忘れないよ

もう、あなたが死んでも会えないね

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