「ユマの失明」

Diarays / MAYU (sm22736655)

『 』は歌詞ではありません。

***

『「汚い本...」

 ―忘却日記―

 ユマはその書物を手に取った。
 新書が多く並ぶ棚に
 乱雑に置かれた汚い紙束。
 それは一際眩しい闇を放っていた。
「どうしてこんな古い日記が...」
「え...?」
 八月三十一日の次のページが
 血で貼り付き開けなくなっていた。

 "愛する人と、永久に"』

途切れかけてた生命線が
毒蛇のように舌出して
掌の上、性感帯を
優しく伸びてく

ほら真っ赤な紹介ページでくだらない
プリセットでチープな細い恋愛を
夢日記でこっそり綴(つづ)る
崩壊欲に溺れ媚びた

『作者:不明

 彼女には胸を張り
 友達と呼べる人間が存在しなかった。
 元々読書を好む彼女は、
 その奇妙な日記の作者に
 惹かれていった。
 自分がその作者の
 一人だということにも気付かずに。』

解(ほど)けかけてた生存本能
世界を変える言葉は
あなたが記す全てに宿されて
「生きて」

ほらあっちもこっちも渇く静かな
カルテットに代替(かわ)った夢を寓居に
愛注射でちょっぴり
太ももの快を注いだ夜に

ねぇ一切合切の
感情を奪ってはいけない?
この空虚な漆黒サーカス
もう一度咲け
また失敗ばっかりの
恋ごっこに陶酔的な
ロンリーベイベー
逆らっても作家に乞う
続かないデートは消えて
虚言に妄執通りであなたを探す
この手で触りたい

『その日も図書室で狂ったように
 日記に読み耽っていた。
「...?」
 本棚の向こう側から
 こちらに微笑みかけてくる
 男子生徒がいた。
 何故だか、この青年が
 日記のことを知っていると
 すぐに理解した。』

壊れかけてた脳内投射
「仲良くしてね」
乱れた正しさがわからなくなって
委(ゆだ)ね笑った

何度もキスして夜を包み込む
誰も気付かない小さすぎる私を
「君は気付いてる
 誰も存在し(い)ないこと」
神様ありがとう
これが私の"騎士(ナイト)"

『彼女はだんだんと
 視力が弱まっていた。
「最期に焼き付けておきたい」
 冬が終わる頃には
 完全な闇が彼女の目を覆った。
「私、もう満足だよ」』

どうかどうか聴いて頂戴
私が集めた音
手探りの左手が
その首を絞めるまでは

『本当に不思議な本だよ
 その日付に望むことを書けば
 現実になる』

『さよなら、ユマ
 ごめんね』

ねぇ一切合切の
感情を奪ってはどうだい?
この数奇な桎梏(しっこく)サーカス
もう一度哭(な)け
また失敗ばっかりの
愛ごっこに依存性的な
ロンリーベイベー
逆らっても殺家に乞う
捲(めく)れないページは消えて
また生きても死んでも生きても死んでも
あなたは何処?

涙はそっとあなたに届く

『「これが私の"忘却"」
 ユマの眼帯が外れた。』

「本当は見えてたの」

『青年はゆっくりと
 首にかけた手を解いた。
「日記の効力が知りたかったんだ。
 全部、世界が悪いんだよ
 待っていて、母さん、メア」

 ところで彼女は
 一体どんな望みを書いたのか。
 青年は一番新しいページを捲った。
「......」
 青年の両目から悲しみが零れた。

 一月二十四日
 「愛する人に○される」』

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