「あめのひ喫茶」

ピノキオP / 初音ミク (sm7024530)

***

休日 お昼過ぎ 小雨が降り
約束の時間がやってくるまで
近所の うらぶれた喫茶店で
雨露つきの一枚絵を眺めてる

鈍色(にびいろ)がかった
仏頂面の空
生垣が濡れた地面を見つめてる
水たまりをわざと踏んでく男の子

しとしと ぱらりら
あめのひ喫茶
奇天烈な名前の
創作ランチは微妙な味

スピーカーは壊れてて
静寂が混じり合った
空調がかき消す 雨音を
思い浮かべてリフレインした

アンティークの椅子
アイボリーの壁紙 
店を彩る原色な造花の群れ
お客は私をいれて たったの三人
雨降り特有の まぶたの重い 倦怠感

一人は背の高い
黒ずくめの若い青年
もう一人は太った
狐目のおばさん

二人の人生を遡れるほど
想像力はない
愉快なあだ名を命名するほど
発想力もない

からっぽのコーヒーカップ
あめのひ喫茶
スプーンで湿気をかき混ぜて
淀んだ黒目をうつしこんだ

意味深な伏線も
現実にはそうそう意味が無くて
過ぎたる期待が
心に空洞を生んでしまうんだ

そろそろ約束の時間
あめのひ喫茶
黒い男も おばさんも
傘を広げて出て行った

いつのまにか 客は私一人
店員さんの意識が 気まずくて
押しだされるように
重い腰をあげた

晴れかかった空
あめのひ喫茶
傘をわざと忘れて
君のもとへ向かおうか

そんなことを
ふと思い立ったけど
結局やめた

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