「其の歌い手、氷点下につき」

bibuko / 初音ミク (sm11722542)

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単調な雪景色には飽きたのさ
愛想の無い氷柱(つらら)は
叩いて砕いて檸檬(れもん)の香り
気まぐれに里へと降りようかしら
鼻歌交じりに地吹雪つれて

恐怖は、恍惚

凍りつくほど熱い
歌声はお嫌いですか?
刺さりそうな六弦の歪みは
唯(ただ)此れ絶対零度

心も身体も全部
凍(かた)めて奪ってあげる
降り止まぬ淡雪に埋ずもれて
氷の調べに酔いなさい

雪の布団でねんねんころり
永久に醒めない
眠りで見る夢は何色ですか?
白い素肌に刻む未練は紅
僅かな温度は 遥かに彼方

悲鳴は、旋律

燃えさかる火のような
風花がひらりと揺れて
打ちつける四弦の重さは
つとめて綿雪慕情

冷たく愛して
唯(ただ)この身体が融ける程に
透明に彩った霰(あられ)のつぶてで
わたしを貫いて

嗚呼・・ 恋慕は、純潔

凍りつくほど熱い
歌声はお嫌いですか?
刺さりそうな六弦の歪みは
単衣(ひとえ)に絶対零度

心も身体も全部
凍(かた)めて奪ってあげる
薄れゆく意識の間に
澱(よど)んだ感情は氷点下

白く染め上げた死装束
とてもお似合いよ
塗りつけた雪化粧の淡さは
いみじく雪魄氷姿(せっぱくひょうし)

涙も嗚咽も全部
攫って愛してあげる
閉ざされた氷塊に抱かれて
永遠にお眠りなさい

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