「有漏の町」

ふる / 初音ミク (sm18667860)

***

盲目の蛾に屠(ほふ)られて
揺らぐ水屑(みくず)に
また滴り落ちて行く
湿る風は野蛮な声を
まだ纏(まと)ったままで

喪服の列に響く産声
奏葉(そうよう)ざわめき
耳を塞ぐ老婆
滲む手汗の不快感が
何度でも扉を叩く

巣立つ小夜啼鳥(さよなきどり)
霧を払う歌よ
ほんの僅かな晴れ間を羽ばたいて
朝は祈り捧げ宵に紛れ消える
その姿に救われていたのに

曇天の空の涕涙(ているい)は
道に迷わせ
記憶を錆び付かせて行く
想いをはらんだ雨粒は
どこへ流れ着いて
消えていくのでしょうか

呟いた呪いの音(ね)
止め処なく問い掛ける

耳障りな掃き溜めから
借り物の墓石に
穴を穿(うが)つ有漏(うろ)の笑み
腕に絡みもつれた
薔薇の棘もやがて枯れた

水面(みなも)揺らす
鱒(ます)のうろつきに
影を重ね憐れみの餌(え)を一欠片
胸の中に押し込めた手紙は
まだ貴方の手元にありますか

花壇を踏み荒らし川を泥で濁す
あてにならない約束手放した
去り際の夕べに
戦(そよ)ぐ勿忘草(わすれなぐさ)
その色に救いも求めずに

曇天の空の涕涙(ているい)に
道はぬかるみ
飛沫(しぶき)を上げ押し流す
椅子を蹴り倒す気概も無いくせに
首に縄をかけるのは
もう何度目だろうか

枯れ果てた目の奥で
揺らめいた希望の灯

羊飼いの指笛
丘の上からその音(ね)を攫う
寂寥(せきりょう)の風は
松の種を乗せて荒れて
窓枠を揺するだけ

蜂蜜色の壁は
無漏(むろ)を誘(いざな)い
記憶を蘇らせる
想いを託した水鳥の行方を
追って逝くのは
わがままなのでしょうか

呟いた呪いの音(ね)
止め処なく問い掛ける
呟いた救いの音(ね)
止め処なく差し伸べては
響かせ給え

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