「無人駅と車窓」

松風柚餅子 / VY1 (sm15911947)

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毎朝すれ違う 僕の知ってる
知らない人 とか
顔も知らないあこがれの人とか
お祭の夜に仮面を付けてるあの子とか

無口な信号機 行き場の無い目で
木陰からそっと見てる
途切れたガードレール 川底の空き缶
ポイ捨て気分で中身が迷子のダンボール

掛け時計の針 行き場所を失くし
右左どちらへ廻ればいいのだろう
カーブミラーに移る向日葵畑にはもう
夏は来ない

曖昧な夢に溺れそうな
僕のそんな感情は
もう手の届かない場所
肝心なときに逃げてく
大切なその記憶は
何処へしまったっけ

風になびく洗濯物や
紐を引っ張り走る子犬
いつも僕の知らない所で
いつも何かが変わっていく

透明な膜の向こうで
流れるその景色は
僕を置いてくようで
灰色の空が零した
消えない傷の残り香と
水たまり 最後の波紋

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